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東京高等裁判所 昭和39年(行ケ)132号 判決 1968年2月27日

原告

芳川昌夫

右訴訟代理人弁護士

新長巌

ほか二名

被告

株式会社三徳圧力釜本舗

右訴訟代理人弁理士

松田喬

ほか一名

主文

原告の訴は、却下する。

訴訟費用は、原告の負担とする。

理由

まず、被告の主張する本案前の抗弁のうち、原告の当事者適格の有無の点について判断する。

本件に関する特許庁における手続の経緯が原告主張のとおりであることは当事者間に争いがなく、その審決に対して共有者の一人である原告のみが不服の訴を提起したことは、一件記録に徹し明らかである。

しかして、特許権は、いうまでもなく、特許にかかる特定の発明に関する独占的支配を内容とする権利であり、その対象である発明は、常に完成された一個の技術的思想の創作でなければならないから、ある特定の発明に関する特許権は、それが二人以上の共有に属する場合においても、それが有効か無効かは、常に共有者全員につき画一的に確定されるべきものであり、共有者ごとに区々別々に確定される余地は存しない。したがつて、本件特許を無効とする審決の取消を求める本件訴は、原告ほか二名の共有者全員について合一にのみ確定すべきものであり、いわゆる固有必要的共同訴訟の範疇に属するものといわなければならない。

この点につき、原告は、特許無効の審決の取消訴訟の提起は、いわゆる保存行為に該当し、共有者の一人が単独でできるものであり、また、これを固有必要的共同訴訟とすべき特許法上の根拠はない旨主張するが、右の訴の提起が保存行為に該当するとか、固有必要的共同訴訟とすべき特許法上の根拠がないということは、何ら右の結論の妨げとなるものではない。けだし、本件訴がいわゆる固有必要的共同訴訟であるかどうかは、前に述べたとおり特許権の性質に由来するものであり、必ずしも特許法にその旨の手続規定が存するかどうかによるものではなく、その訴の提起が、本件特許を無効とする審決の取消を求め、その有効な存続を図ることを目的とする意味において、いわゆる保存行為に当るとしても、共有にかかる特許権については、特許権そのものについての分割ということを考える余地はない(分割に関する手続規定もない。)のであるから、このような特許権は、民法所定の共有の場合と異り、全部として、不可分的に共有者全員に帰属するものとせざるをえず、したがつて、その一人が単独で訴を提起することは許されないものと解するを相当とするからである。

原告は、また、本件訴を固有必要的共同訴訟と解するときは、共有者の一人でもが訴の提起に同意しない場合には、他の共有者は自己の意思に基づかずに裁判を受ける権利を奪われ、また、行政機関が終審として裁判をすることになり、憲法第三十二条、第七十六条の規定に違反する旨主張するが、共有者が他の共有者の同意を得られない限り、訴を提起できないのは、権利の性質に由来する共有者相互間の利害調整の問題であるから、その結果、行政機関としての特許庁の審決が確定するとしても、原告主張のような憲法違反の問題が生ずる余地はない。

以上のとおり、本件訴は固有必要的共同訴訟と解すべきであるところ、原告が単独で本件訴を提起したこと前記のとおりであるから、本件訴は当事者適格を欠くものというべく、したがつて、本件訴は、さらに他の点についての判断をもちいるまでもなく、不適法といわざるをえない。よつて、これを却下する。<以下略>(三宅正雄 影山勇 石沢健)

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